ロケを採り入れた番組を作りたい、誰もが考えうる発想だが、具体化するには何らかの着想が不可欠だ。 当時のロケ、一番の難点はバッテリー問題だった。ひかるもカーバッテリー等、あらゆるバッテリーを考え、実験したが、やはり無理だった。 試行錯誤、明けても暮れても実験中、小型弁当箱大、きゃしゃに見えるが、ビニール樹脂でコーティングされた物が目に止まった。 テストをすると十分行ける代物だ。ひかるは、これで放送業界を一変させられる、と小躍りした。 BP90という型名で、早速チャージャーを分解、誰もが驚く75連のフローティング式チャージャーを部下を動因し、一月もたたない内に完成させたのである。 メーカーが4連式を得意になって売り込みに来たが、75連を見せると、腰を抜かさんばかりに驚いた。 こんな事をする人など、想像も出来なかったであろう。 タケシの番組で威力を発揮したが、さらに多重ロケという「ねるとん紅鯨団」、当時では考えられない番組手法で、このフローティングシステムが成否を分けたと言える。 ひかるはタケシの番組でロケの真髄を得とくした、Mカメラマンを起用し、本格的なロケ時代の幕開けを確実な形にしていったのである。 現在、田舎へ泊まろう、NHKの家族に乾杯などオールロケ花盛りだが、30年以上も前にそれ以上の番組が作られていたのだ。 恐るべきは、このBP90なるバッテリイー、あらゆるロケの電源として使われ、なおかつ、30年をたった今でも活躍中。 ひかるの着想、電光石火の決断が、ロケの電源を統一、安定させたのだ。 このバッテリーは照明やVTR,音響機材など全てのロケ機材の電源に使われ、各メーカーが統一電源で機材開発、設計が出来、日本の映像業界が世界の先駆者に成ったのは言うまでもない。 いち早く電源を統一、投資リスクを軽減できた業界は五十年以上もアメリカの放送NTSC方式から脱却。デジタルのスカイツリー時代を築いて行ったのである。